↑閉館まで粘った青森県立美術館
●3度目 29歳 道奥国(みちのく)の旅
本州の最北端、続く道の突き当りで構える国の文化は独特の
風土・風習で、醗酵している。
太宰治も寺山修二も青森のこの土着的な空気を吸っているのだなぁ、と思う。
14歳の自分、22歳の私とすれ違いながら思うのは、
自分にも その醗酵に呼応する部分が少なからず出来上がってきているということ。
歳を重ねて捉えられるもの、味わえるものが増えているなぁ、と思うと、
ふつふつと喜びが込み上がる。
青森駅に降り立って、最初にひっかかったのは、
駅構内に飾られた造花だった。
連綿とサッシとサッシの間に吊るされた花瓶に
人工的で鮮やかな色が目を刺した。
その野暮ったい彩度がかえって新鮮に映る。
色々な思惑の中、中途半端な行為によって
代わりの何かにとって変えられませんように、
と足早に通り過ぎながら、早口で唱える。
実はこの後、旅の中で何度も造花と出遭う。
この旅の大事なことに繋がるなんて思いもよらなかった。
その最初一瞬、祈りながら通り過ぎただけ、この時は。
●伊藤隆介×岡崎京子 岡崎京子さんへのラブレター
今回の目的は、大学の先生が出品している、ラブラブショーを観にいくこと。
ラブラブショーのかわいいポスターは、若い人が経営するショップ、カフェ、本屋さんなど
文化発信と捉えられる場所には必ずといって良いほど
掲示されていて、お爺ちゃん、お婆ちゃんが読者であろう、
川柳や短歌の載ったフリーペーパーにもその情報は
しっかりと載っている。かなり古くて、良い感じの居酒屋さんでも、
ママが美術館をつなぐシャトルバスの事を教えてくれたりして、すごいね、と思う。
先生の作品がある、青森県立美術館をさきにみる。
青森県立美術館は、三内丸山遺跡が発掘された記念として、
青森されたという経緯があって、聞けば、黒い土壁や、
少し掘り下がった地面に遺跡を意識したのがわかる。
今まで見た美術館の中で、一番、天井が高い、と思う。
ずいぶん高い。
作品からこういう要求がでてきているからなぁ、と思う。
この展覧会は同じ空間に展示されるに至った経緯や裏づけが
わざわざ活字になったりしていないので、観ていると却って心と頭が働く。
先生と同じ空間に展示されていた、岡崎京子さんの漫画は
高校生の私には少しスパイシーすぎて
大人のものだったけれど、あるいは格好良いなあと思っていた、
隣のクラスの女の子に起こっている日常だったけれど、今なら、
色とりどりでクレイジーな一面に、救われたり何かをあきらめたりできる。
作品の痛々しさの中で、一瞬の明るい光がさした所、
それが永遠に続けば良いのに、と祈る気持ちになる、
岡崎さんは幸せに元気に暮らしているだろうか。
先生がつくったマンションのジオラマは、
いつものように驚くほどチープでキッチュ、
大画面に映されたつくりものの、世界と日常はまさに、
彼女の漫画の登場人物達が暮らしている場所だった。
もう一つの月面は、ポップで物悲しい希望の射す場所。
ここから、夢の中の地球とみんなを見下ろしている。
ラブラブショー:開催概要::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
青森県立美術館 × 十和田市現代美術館 = ラブラブショー
アーティスト × アーティスト = ラブラブショー
美術 × 写真 × 漫画 × デザイン × 映像 × 音楽 × 文学・・・= ラブラブショー
作品 × 建築 = ラブラブショー
2名の作家のコラボレーションによる、展示空間そのものをキャンバスに見立てたインスタレーションで構成される美術展。美術のみならず多彩なジャンルで活躍する作家が参加、作家と作家が出会い、展示空間と作品が出会い、そして作品と観客が出会う。その様々な「出会い」をとおして、「表現」の可能性と、新しい「価値」を生み出すことを目的とした企画です。
会場となるのは青森県立美術館と十和田市現代美術館。そう、「ケンビ」と「ゲンビ」も出会います。建築的にも活動的にも、21世紀型の新しい美術館のあり方を示す2館が奏でるアートの豊かなシンフォニーをお楽しみください
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岡崎京子さんの近況
http://www.asahi-net.or.jp/~aq4j-hsn/okazaki/index.html
伊藤隆介先生
http://www.ne.jp/asahi/r/ito/index.html
秋田県立美術館。
http://www.aomori-museum.jp/ja/exhibition/28/