2010年1月31日日曜日

道奥国の旅④ 造花の話

一日目を思い出した。

青森県立美術館でみた奈良美智さんの作品で
きになったのは、いつもどおりのGrafさんのつくる小屋の中の作品。
暗いこちら側から、小屋に無数に空いている穴から明るい部屋の中をみる仕組み。
立体作品のまわりに、床から生えている造花。
その造花がどうしてもしっくりこないのでした。

廃校のアトリエで知り合った作家さんが、色とりどりの画用紙でつくっていた、
お花畑の方が、この作品には合いそうだなあ。
ハサミとノリでつくられた一本一本の植物達の方が
工業製品よりも、ハッピーだなぁ、と思った。















 整理しきれないまま、ホテルのまわりを散策。
昭和を再現したような、古い繁華街で、もう閉店している魅力的なお店をみつけた。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
暗い外から、中の明かりを覗く。明日はここにきたいなぁ、と思う。
薄明かりの中に、造花。

 自然を模すという行為は 愛でつつ畏怖、自分の矮小さを確かめる感じとか

その人が その対象を模すという行為にどれだけ救われているのかを表している気もする。

須田悦弘さんの作品には、そういう 密やかな信仰心がみてとれる。
http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_b/gallery/shokudo/suda_j.html




 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
可愛いケーキ屋さんを発見。クッキーを購入。
店内には古い新聞記事が。なんと昭和6年からのお店。
http://hirudoki.hungry.jp/archives/2008/05/31/000473.php

2010年1月16日土曜日

道奥国の旅③ 世界の青森 縄文スピリット
















●世界の青森へ 

吹雪の青森市から、雨降る十和田市へ。車で2時間ほど。
十和田美術館の方は気鋭の注目作家の常設展が特色。
美術館の周辺に草間弥生さんの公園を建設中。
市としての芸術価値をあげようとしていてテンションもポテンシャルも高い。
三内丸山遺跡が発掘されたことを機に、青森は世界遺産登録を目指して頑張っているのだなぁ、と思う。若者を美術館に呼ぶような企画をしていて、鑑賞中にはバスツアーの人がどどっとおしかけるシーンに出遭う。韓国語、台湾語、英語、津軽弁も負けじと聞き取れない。
年配ご夫婦に津軽弁で話しかけられる。大阪弁の人も少し。

「これ、どうやって観ればよいの?何を観るべき?」
「これは、うちらにはわからんなぁ。」
「これは、ようやったなぁ。」

とか、竹を割ったような話しぶり。そんな風に話せる人が、まっ白い美術館のギャラリーにうようよといる。札幌だとあんまり考えられない状況。
こんなおしゃれ空間に入っていっても物怖じしませんよ、私もおしゃれなので、という自信のある若者と、美術関係者、見慣れた鑑賞者しかいないのが札幌の状況だと思ってしまう、私。

それに、美術館・博物館で働いている人の人数がすごく多い。
三内丸山遺跡では、おそらくは数年前まで教鞭をとっていたであろう方が、培った知識を活かして解説をしようとうずうずしていた。雪降る外に悩むも、結局断ることができずに、小一時間外の遺跡をみてまわる。長靴をかりる。解説は、さすが、の一言。
縄文人が、私が趣味で集めているものと、同じものをコレクトしていた(実は私、魚の脊椎とか、耳石を集めているのです。)ことがわかって、すっかり縄文文化の虜になる。




















縄文熱が冷めやらぬまま、その熱にまかせて郷土資料館に足をのばす。こちらでも解説員の女の人がいつでも解説ができる準備で鑑賞者の様子を伺っているので、少し気が散ってしまう。そういえば、年末にみた北海道近代美術館の「炎×土」の展覧会のワークショップが面白かった。教材研究しようと思いつつできていなかった。そんな折、ちょうど縄文模様の作り方がわかって実り多い。

郷土資料館の建物自体は、もと銀行で重要文化財だった。結局解説を受ける。
でも今度 受けた解説はプロっぽくなくって、本人の感想を交えた等身大の解説。
あったかみがあって、こちらも悪くないなぁと思った。
帰り際、するりと受付の横を抜けていこうとした瞬間、従業員の女性二人がすかさず大きな声で
「ありがとうございました」 のユニゾン。わぁ、すごい。民間企業のような行き届いた感じ!その一生懸命さに少し、胸打たれる。
いけるかも、世界遺産登録!がんばれ、青森、と思ってしまう。

宿泊先の廊下で、椿の造花を発見。深紅。青森、造花流行ってる?と思う。
眠りに就く前に、縄文時代にタイムスリップする妄想。すぐになじむな、と確信する。

十和田現代美術館
http://www.city.towada.lg.jp/artstowada/


















三内丸山遺跡。
http://sannaimaruyama.pref.aomori.jp/

青森県立郷土館

2010年1月8日金曜日

道奥国の旅② ●3回目

 















↑閉館まで粘った青森県立美術館

●3度目 29歳 道奥国(みちのく)の旅
本州の最北端、続く道の突き当りで構える国の文化は独特の
風土・風習で、醗酵している。
太宰治も寺山修二も青森のこの土着的な空気を吸っているのだなぁ、と思う。
14歳の自分、22歳の私とすれ違いながら思うのは、
自分にも その醗酵に呼応する部分が少なからず出来上がってきているということ。
歳を重ねて捉えられるもの、味わえるものが増えているなぁ、と思うと、
ふつふつと喜びが込み上がる。

青森駅に降り立って、最初にひっかかったのは、
駅構内に飾られた造花だった。
連綿とサッシとサッシの間に吊るされた花瓶に
人工的で鮮やかな色が目を刺した。
その野暮ったい彩度がかえって新鮮に映る。
色々な思惑の中、中途半端な行為によって
代わりの何かにとって変えられませんように、
と足早に通り過ぎながら、早口で唱える。

実はこの後、旅の中で何度も造花と出遭う。
この旅の大事なことに繋がるなんて思いもよらなかった。
その最初一瞬、祈りながら通り過ぎただけ、この時は。

●伊藤隆介×岡崎京子 岡崎京子さんへのラブレター
 
今回の目的は、大学の先生が出品している、ラブラブショーを観にいくこと。
ラブラブショーのかわいいポスターは、若い人が経営するショップ、カフェ、本屋さんなど
文化発信と捉えられる場所には必ずといって良いほど
掲示されていて、お爺ちゃん、お婆ちゃんが読者であろう、
川柳や短歌の載ったフリーペーパーにもその情報は
しっかりと載っている。かなり古くて、良い感じの居酒屋さんでも、
ママが美術館をつなぐシャトルバスの事を教えてくれたりして、すごいね、と思う。

先生の作品がある、青森県立美術館をさきにみる。
青森県立美術館は、三内丸山遺跡が発掘された記念として、
青森されたという経緯があって、聞けば、黒い土壁や、
少し掘り下がった地面に遺跡を意識したのがわかる。

今まで見た美術館の中で、一番、天井が高い、と思う。
ずいぶん高い。
作品からこういう要求がでてきているからなぁ、と思う。
この展覧会は同じ空間に展示されるに至った経緯や裏づけが
わざわざ活字になったりしていないので、観ていると却って心と頭が働く。

先生と同じ空間に展示されていた、岡崎京子さんの漫画は
高校生の私には少しスパイシーすぎて
大人のものだったけれど、あるいは格好良いなあと思っていた、
隣のクラスの女の子に起こっている日常だったけれど、今なら、
色とりどりでクレイジーな一面に、救われたり何かをあきらめたりできる。
作品の痛々しさの中で、一瞬の明るい光がさした所、
それが永遠に続けば良いのに、と祈る気持ちになる、
岡崎さんは幸せに元気に暮らしているだろうか。
先生がつくったマンションのジオラマは、
いつものように驚くほどチープでキッチュ、
大画面に映されたつくりものの、世界と日常はまさに、
彼女の漫画の登場人物達が暮らしている場所だった。
もう一つの月面は、ポップで物悲しい希望の射す場所。
ここから、夢の中の地球とみんなを見下ろしている。


ラブラブショー:開催概要::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

青森県立美術館 × 十和田市現代美術館 = ラブラブショー
アーティスト × アーティスト = ラブラブショー
美術 × 写真 × 漫画 × デザイン × 映像 × 音楽 × 文学・・・= ラブラブショー
作品 × 建築 = ラブラブショー

2名の作家のコラボレーションによる、展示空間そのものをキャンバスに見立てたインスタレーションで構成される美術展。美術のみならず多彩なジャンルで活躍する作家が参加、作家と作家が出会い、展示空間と作品が出会い、そして作品と観客が出会う。その様々な「出会い」をとおして、「表現」の可能性と、新しい「価値」を生み出すことを目的とした企画です。
会場となるのは青森県立美術館と十和田市現代美術館。そう、「ケンビ」と「ゲンビ」も出会います。建築的にも活動的にも、21世紀型の新しい美術館のあり方を示す2館が奏でるアートの豊かなシンフォニーをお楽しみください
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岡崎京子さんの近況
http://www.asahi-net.or.jp/~aq4j-hsn/okazaki/index.html

伊藤隆介先生
http://www.ne.jp/asahi/r/ito/index.html

秋田県立美術館。
http://www.aomori-museum.jp/ja/exhibition/28/

2010年1月6日水曜日

道奥国の旅 一度目と二度目の旅の回想




















●お正月
お正月を青森で過ごす。特に行きなれたわけでは ないけれど3度目の陸奥。

青函トンネルをくぐった時、青森の駅に降り立った時、端々にすっと過去の自分とすれ違うのでした。まるで、「思ひ出ぽろぽろ」の映画みたいだ、と思いながら、
今回の旅の記録の前に、少し回想、一度目のこと、二度目のこと。

●14歳・22歳みちのくの旅
 
修士論文が寺山修司の芸術表現に関することだったので、
一時期、絵を描くのがおろそかになるくらい、寺山修司の文献や映画・
舞台を貪る日々があった。彼が自作の中で実の母と重ねて青森の
愛憎を語る度、私も彼に同調するように彼の故郷への想像をたくましくした。
ついには青森という国の独特のうねりのある空気も、目をつぶれば、
思い描いて吸い込めるほどに、悪い癖だなと思いながらも、その空想を
確かなものにしてしまっていた。
青森の何気ない景色の端々が、私にはどうしも、もの言いたげに映ってしまう。
小さなきっかけが触手を延ばして、寺山修司の唸りの世界に繋がっていく。
頭の中の回路は常に開きっぱなしになっていたのだった。
全てがそこに繋がっていると思い込んで調べ続ける、バカ真面目で勤勉な
学生だったと思う、どんなきっかけも逃すまいと、全身がヒリヒリと尖っていた。

修論の研究旅行はフェリーで移動したので、3度目の今回、青函トンネルを
通るのは14年ぶりだった。1度目は中学の修学旅行の時。
今の私の半分程の人生を生きている、一人前気取りの私。
中学生の私が隣の誰かと、ガラスのトンネルを想像しながら、
これから確かめられるであろうエイの顔について話し合っていたのを、ふと、思い出す。
地底深くまで掘り下げた暗いトンネルを通過するのに、海の中をのぞけるはずもなく、
その落胆をまるごと、思い出した。
論文の研究旅行とは全く別の、ねぷた・りんごパイ・津軽三味線・初恋・明るく健康的な観光都市、みちのく青森の旅。

2度目、大学4年生の私がもっとも感動したのは、弘前公園の大きな松だった。
幾重もの年輪を重ねた松が、あちらこちらに生えている。
その生命力と歴史の深さに圧倒された。
幹の表皮が、フラクタルになっていて、落ちていた一枚を剥がして
手帳に貼り付けた。暑い季節だったので、赤い花弁もはりつけた。
多感だったので、それだけで青森の一部、
寺山修司の悲しみの一部を自分の中にも流した気分になっていた。

寺山修司記念館
http://www.terayamaworld.com/kinen/about/index.html
http://www.showanavi.jp/museum/0026/

2010年1月2日土曜日

●ローシカ●書庫303 memo

旧年中の振り返り日記、メモ。




●「書庫303」
半年振りに会うお友達とシャトールレーブというかわいらしいお店がたくさん
詰まった、隠れ家のようなマンションにに遊びに行きました。
書庫303という、雑貨のあるブックカフェで赤い実のお茶を飲む。
壁中本だらけ、という状況に胸躍ります。
それから、かわいらしい雑貨の数々と、ワイヤー作品。
そのワイヤーワーク、川上弘美さんの文庫の表紙になっていて見覚えのあるもの。
店員さんは、B.C.Sでマメ本教室をしていた雑貨作家さん、
pluie の山口詩織さん本人。
扉が二重になっていて、内扉が、内扉の小ささが、なんともいえず、ぐっとくる。
店内のつくりを味わっていると、なんとなく、Pasque iland の「電話室」と描かれた扉
とか、その雰囲気を思い出す。
●ローシカ
おなじく、マンション内にある、「ローシカ」というお店。
骨董と多肉植物のアレンジを扱うお店なのらしいけれども、商品が異常に少なく、
店員さんのレイアウトのセンスが抜群に良いので、照明の展覧会か、
フラワーアレンジの展覧会か、と勘違いしてしまい。
私、しばらくギャラリーだと思って心静かに拝見していました。
広い空間をもてあまさずに作りこんでいて、ショップらしからぬ不思議な場所になっています。

ぽつ、ぽつと、仕入れてある品物は、かなりツボで二点購入。
チョココロネの生地をまく角の形の鉄と、牛につける鈴(綺麗なドーナツ型)。
機能がわかない無知な私でも美しさを讃えてしまう実用品…
おそらく有能でたくさん働いてきたのでしょうねぇ・・・しみじみ。

ずっと前に、道端でおもむろに拾った鳥かごの頭だけのようなものを
後生大事に飾りとして使っているのだけど、
ローシカの店主さんのお話によると、
駄菓子やさんがお菓子やおまけをぶら下げるもの、らしい。

SPACE 1-15
http://www.mosslinkage.com/shop/siestalabo/




謹賀新年
















あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
家族に御節をほめられ、気分の良い私です。ほほ。

大晦日から元旦にかけての雪嵐の予報ははずれ、
しんしんと雪降る中、年越し前におでかけ、家をかけでた
その時、雪面に寝転がるように大の字になって
みごとに転びました・・・。
通話中だった携帯電話を遠くまで飛ばして、
あぁ、ごめんさい・・・今年も私は私です。
なんだか、少しめでたい気がする、初転び。
















写真は仏様の横に活けた南天の影。
神社の ぼんぼりのような光源と、テント。
甘酒をのみながら帰路。


出先で窓を開けて、除夜の鐘。

昨晩から今朝にかけての嵐もなんのそのです。
新年と私の気持ちも走り出しています。